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安心のレベルを1段階引き上げるために

高瀬 正美

映像商品開発2部
部長

小型軽量でありながら性能は倍以上を

ハードウエアには、お客様の目に触れる外観とお客様にはわからない内部構造があると思います。両方についてお聞きしていきたいのですが、まずはハードウエア全体の設計思想を教えてください。

高瀬:当社のカメラは伝統的に小型軽量を大きな特長にしています。それによって、お客様の負担を減らしたり、撮影領域を広げたりすることを狙っています。しかし、小型軽量だから壊れやすくてもいいとか、操作性が悪くても仕方ないというふうには考えていません。小型軽量でありながら、性能は倍以上を目指しています。

新しく登場するE-M1Xは、どんなコンセプトで設計していますか。

高瀬:キーワードは「信頼性」、つまり信頼されるカメラにしたいと考えて設計を進めました。信頼はさまざまな要素から成り立ちます。しっかりしていて壊れないこと、操作しやすいこと、厳しい環境に耐えることなど、考慮しなければならないことがたくさんあります。1つひとつのレベルを引き上げるために設計に工夫を凝らし、求める成果が得られているかを検証しました。

必要なボタンを使いやすく配置

まずは、操作性についてお聞きします。E-M1Xのダイヤルとボタンの配置について教えてください。

高瀬:E-M1Xは縦位置グリップ一体型ですが、縦位置でも横位置でも主要なボタンは同じ位置になるように配置しています。カメラを構え直したときにボタンの位置が違うと、どうしても違和感を覚えてしまうからです。そして、使いやすいボタン配置を考えました。従来の機種に比べるとスペースが大きいため、ボタン配置には多少余裕がありました。プロの写真家の方々にお話をお聞きし、自分たちでもさまざまな検証をしながら、ボタンで操作すべき機能を精査して、マルチセレクターを付けたり、新しいボタンを追加したりしました。

1機能1ボタンによる最適なレイアウト

一脚が倒れても大丈夫な堅牢性

操作性については設計に自由度があったわけですね。

高瀬:ただ、操作性だけを考えると、堅牢性が損なわれます。2台の機材を肩から提げていると、ボディー同士がガチャガチャと当たることもあります。そこでダイヤルは埋め込み式にしてなるべくフラットにしたり、背面モニターもできるだけ段差がないようにしたりして強度を高めています。

どうやって効果を測定しているのですか。

高瀬:これまでも、すべての機種で一定の高さから硬いタイルに落として、問題なく機能するかは確かめています。今回は、プロの現場で決定的な瞬間に機材が動かないということがあってはならないので、手ぶれ補正ユニットなどの精密な機構を周りがどれだけ緩衝できるかを確認するために、目の高さに一脚で機材を固定し、それを倒して機材に問題がないかどうかという、さらに厳しい検証も行いました。一脚が倒れる場合は、想定しない角度で地面にぶつかるため条件は過酷ですが、問題なく機能しました。※1

※1 実際に地面に落下した際の保証はしていません。

社内独自の厳しい基準で防滴性能を検証

オリンパスのカメラが備える防塵・防滴の構造は、お客様からの信頼も厚いと思います。どのように実現しているのですか。

高瀬:これは技術の蓄積という部分が大きいと思います。フィルム時代から防塵・防滴設計に取り組んできましたし、フォーサーズ規格の第1号機E-1も防塵・防滴でした。いまは水深15mまでの水中撮影ができるコンパクトデジタルカメラToughシリーズもあります。こうした技術の蓄積によって、高いレベルの性能を確保しています。例えば、バッテリーの蓋の裏側は通常ならスポンジを貼り付けるところですが、E-M1Xではゴムを採用しています。それも水中撮影ができるToughと同様に、二重構造にしています。一般に防水構造は組み上げてしまえば安定した性能を期待できますが、お客様が開ける箇所にはゴミが入るかもしれないので、より安全性を高めているのです。

防滴性能はIPX1という基準をクリアーしているということですね。

高瀬:IP規格とは電子機器の防水・防塵性能を表す規格のことで、IPX1は雨だれ程度なら防ぎうる防滴性能を示します。カメラは同じ向きで使われるとは限らないので、独自に条件を厳しくし、すべての面でワンランク上の基準にして評価し、クリアーしています。開発段階では、IPX1をはるかに超える、シャワーに近いような厳しい状況での防滴性能評価も実施しています。※2

※2 動作環境の保証(当社試験方法による)は、IPX1となります。

IPX1よりはるかに厳しい防滴試験を実施

定評あるダストリダクションシステムが進化

ほこりの舞う環境では、レンズ交換時に内部にゴミが入らないか気を遣います。ダストリダクションシステムの仕組みを教えてください。

高瀬:イメージセンサーの前にスーパーソニックウェーブフィルターと呼ばれるフィルターを置いています。イメージセンサーとフィルターの間はパッキンで密閉されていて、そこにゴミが入ることはありません。カメラが起動したときに、フィルターを秒3万回以上超音波振動させて、フィルター上のゴミを払い落とします。

ダストリダクションシステム

そうなると、イメージセンサーにゴミが付くことは原理的にあり得ないということですか。

高瀬:あり得ません。また、プロ写真家の方々やお客様から写真にゴミが写り込んだという不満は全くと言っていいほど受けたことがありません。これまでも高い効果を発揮しているシステムですが、E-M1Xでは、フィルターに新しいコーティングを施して、フィルター自体にゴミやほこりが付きにくくしています。

ヒートパイプで熱を一瞬で移動

E-M1Xの内部構造で、ほかに工夫していることはありますか。

高瀬:今回苦労したのは、放熱処理です。この機種は、2基の画像処理エンジンを積んでいます。4K動画やプロキャプチャーモードでフル稼働させたとき、かなりの熱を発します。熱は熱源があるところにこもるので、ボディーが大きくても放熱にはそれほど役に立ちません。熱を何らかの方法でほかのところに移動させる必要があります。まずは金属プレートを使って熱を移すことを考えましたが、プラスチックよりは熱伝導率が高いものの、十分な効果はなく、プレートの途中が熱くなってしまいます。

どのように解決したのですか。

高瀬:ヒートパイプを使っています。ヒートパイプは中が真空のパイプに揮発性の液体が入ったもので、熱を持つと液体が一瞬で気化し、上方にすぐに伝えてくれます。さらに、大きいプレスでヒートシンク構造を作り、全体を効率よく冷やしています。そうした構造を作りながらも重さには制限を設けてコンピューターシミュレーションを繰り返し、全体の小型軽量性を損なわないようにしているのが、オリンパスらしさだと思います。

ヒートパイプを採用した放熱構造

※所属、役職は2019年3月現在

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