

私が中学生だった1970年代、日本全国で蒸気機関車(SL)がその役目を終えようとしていました。東京生まれの私にとって、SLは実際のところほとんど目にすることはありませんでしたが、冬場の家族旅行ではSLによる心地よい蒸気暖房を味わうこともありました。
新幹線の開業で日本全国が夢の超特急で盛り上がっている中、なぜかこのどっしりした鉄の塊のような武骨な乗り物に魅せられてしまい、全国のSL最後の雄姿を見に、一眼レフ、ポータブル録音機、8ミリ(ビデオではありません)を担いで山河を駆け巡りました。そのSLが最近は復活運転することが増え、また身近に見ることができるようになり、青春時代を思い出しながらまた追っかけを始めています。その経験もあって、昨年開業しました鉄道博物館のD51シミュレータの制作に参加できたのはとても幸せでした。

荒木館長代理(右)と高崎支社の皆さん
高崎車両センターには現役でD51 498号機が所属しています。おかげでD51シミュレータを制作する上で実機から色々教えてもらい、今回もと思ったのですが。残念ながら長期のお休みに入っていまして取材日には火が入っていない状況でした。
ところが幸運なことに同じ日に現在秩父鉄道で活躍しているC58 363号機が検査のために来ていて、取材日には最終検査のための試運転を高崎駅構内実施しているということがわかりました。D51の取材時からお世話になっている機関士さんや、鉄道博物館の荒木館長代理、JR東日本高崎支社の皆さんのご協力もあってその試運転を取材させていただくことになりました。
C58の一番の思い出は北海道の釧網本線の原生花園(臨時駅)近くの鉄橋を走行する姿です。冬にここを訪れると鉄橋の向こうは流氷でSLの煙と赤い鉄橋そして真っ白な流氷が一枚の写真に収まります。ここはSLファンにとってとても有名なところでした。そこを主に走っていたSLがC58だったので、特に汽笛、ドラフト音が印象的でした。今回の取材ではそれらを可能な限りの高音質で収録することを心がけました。

C58
まずSLを収録する時に大変なのはSL以外の音の侵入をどうやって防ぐかということです。駅近くでの取材ですので、まず発車メロディなど聞こえないタイミングで、さらに電車が頻繁に入場してきますので、それらがいない隙を見はからってということになります。
さらにSLならではのドラフト音は固定位置で収録するとあっという間になりますので、安全に気をつけながら可能な限り並走しながら収録するという技も行いました。汽笛の収録はやや離れてオフ気味に、石炭をくべているところは機関室内での収録になります。
今回のような取材は許可なくしては収録できませんので、大変貴重な高音質サウンドとしてお楽しみいただければ幸いです。

収録の様子