

風景写真誌編集に携わる石川薫氏が、今回のテーマに適した若手作家4名の作品をセレクトしグループ展を開催。森に潜む生命力の強さ、生物の多様性を育む力を新鮮な視点で捉えた写真で構成します。
『風景写真』は、1989年に創刊した写真雑誌です。その名称のとおり風景写真を専門とする雑誌ですが、一口に風景と言っても、その対象となる素材は自然、動物、農村、歴史的景観から都市風景まで実に広範です。しかし、その中でもとりわけ風景写真家の心を魅了し、写欲を高揚させるのが、樹々の姿であり、それらが集まった森林の様相であり、森林を巡る大気と生命の物語と言えるでしょう。
今回、『風景写真』的視点から、複数の写真家の作品により、日本の森の姿を描きだす作品展を構成するという、難しくも興味深い機会をいただき、私の頭にまず浮かんだキーワードは"多様性"でした。日本は、国土のおよそ70パーセントを森林に覆われています。これは先進国ではフィンランドに次ぐ世界第二位の占有率だと言われています。しかも、国土が南北に長く、亜寒帯から亜熱帯まで変化に富んだ気候を持つがゆえ、地域によって森の様相は大きく異なっており、その広大かつ多様な植生が、日本人の歴史、文化、風土の醸成に影響を与えてきました。日本はまさに森の国であり、森は日本人の心のふるさとなのです。
今回、"日本の森"という、途轍もなく広大で、複雑な題材を表現するのに、視点も、地域も、表現方法もまったく異なる4人の作家をあえてぶつけてみることにしました。
豊富で清らかな水に育まれた奥吉野の森深くに分け入り、水と木々が織りなす自然美を見つめ続ける窪田諭人氏。自然の精霊の声を聞くが如く樹々と対話し、彼らの語る物語を映像詩に紡ぐ辰野清氏。森に巡る水と命の循環に細やかな視線を注ぎ、命の意味を問いかける福田健太郎氏。亜熱帯・八重山諸島で本土とは大きく異なる南国の植生と生態系を、自由な発想とカメラワークで切り取る深澤武氏。語り口も、見つめる目線の先にあるものも違う4人の作品が、同じ"森"というテーマで一同に介したとき、その空間に何が浮かび上がるのか。私自身、わくわくするようなある期待を込めて、作品を選んでみました。これらの多様な森の姿に触れた皆さんが、それぞれに、自分につながる何か—命のふるさと—を感じることを期待して・・・・・・。
隔月刊・風景写真 編集長
石川 薫

(c)窪田諭人

(c)辰野清

(c)深澤武

(c)福田健太郎
1955年 奈良県生まれ
1977年 名古屋工大工学部建築学科卒業
1978年頃から大峰・台高山系の渓谷美に魅せられて山や渓谷に登り始める。
1993年頃から大峰・台高をはじめ大和の山河の写真を本格的に撮り始める。
2005年「奥吉野・魅惑の渓谷」にて第13回前田真三賞受賞
2007年「水の劇場 奥吉野・魅惑の渓谷」出版
1959年 長野県生まれ
2003年 第11回前田真三賞受賞
2004年に辰野清写真事務所を設立しフリーランスとなる。
独自の視点で日本の自然風景を撮影。表現の物語性を追求する傍ら、写真講師としても多くの写真家を育成している。
写真誌コンテスト審査員、写真誌執筆、ツアー講師など幅広く活躍している。
(社)日本写真協会会員、自然奏フォトアカデミー主宰
1974年 埼玉県生まれ
1998年 東京理科大学工学部卒業後フリー
大学在学中から山歩きをしながら本格的に風景写真を撮り始める。
現在は、北アルプス白馬岳など長野県をメインフィールドとして四季折々の風景を追い求めるほか、沖縄、八重山諸島にも撮影領域を広げている。
ニコンカレッジ講師、クラブツーリズム写真講座講師
2002年「北アルプス白馬・大地の鼓動」 出版(デジタルパブリッシングサービス)
1973年 埼玉県生まれ
1994年 日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家竹内敏信氏のアシスタントを経てフリーランスフォトグラファーとなる。
「森は魚を育てる」をテーマに、自然のサイクルを見続けている。
また、カメラ雑誌などへ原稿執筆、写真ゼミの講師など幅広く活動している。
(社)日本写真家協会会員
【今後の写真展開催予定】
京都・ギャラリー古都 期間:2010年7月8日(木)~7月13日(火)
午前11:00~午後7:00 最終日 午後3:00 水曜休館
お問い合わせ:ギャラリー古都 TEL 075-257-2666